まるで期待外れの規制緩和

地方分権推進委員会は、さらに勧告を重ねなければならない。機関委任事務といった、いわば行政全体に共通する自治法の改正から、さらに進んで都市計画法などの個別法の改正に踏み出す必要がある。公共事業についても。道路やダムなど各事業の建設・管理を自治体に移すことを明示し、関連の省令や通達の修正、廃棄をうたわなければ。地方分権は空振りに終わるおそれが十分ある。

権限論でこのように後退し、本丸の個別法や通達に踏み込めないのでは、官僚支配のもう一つの武器になっている補助金の整理などをテーマとした、財源問題をめぐる第二次勧告(一九九七年六月)も期待できないであろう。今後、公共事業はどうあるべきか。分権化社会のなかでの全体像を踏まえて、補助金も廃止する方向で検討される必要がある。委員会は官僚の介入を排して、真の地方分権に向けて奮闘しなければならない。

規制緩和も事態は深刻である。『議会−官僚支配を超えて』において、私たちは、規制緩和について「経済的自由」と「社会的規制」とに分けて考えた。前者については緩和は当然だが、後者については慎重にしなければならないし、都市計画や土地利用など強化しなければならない分野があると強調しておいた。

しかし、その後、政府の規制緩和の推移をみていると、話は逆に進んでいるようにみえる。行政改革委員会の規制緩和小委員会(小委員長は宮崎勇大和総研特別顧問)が一九九六年二月に発表した『光り輝く国を目指して規制緩和の推進に関する意見(第一次)』によると、そこでは①土地・住宅、②情報・通信、③流通、④農水産物、⑤運輸、⑥金融・証券・保険、⑦エネルギー、⑧雇用・労働、⑨医療・福祉、⑩競争政策、⑥法務、⑩基準・認証・輸入手続き・保安業−しか検討対象になっていない。