保有株式をファミリー企業に分散

これではいかにも本来の「公益法人」から逸脱している、として法務省は「公益」でも「営利」でもない団体に別途新設する「中間法人」の法人格を与える「中間法人法案」を二〇〇一年春の通常国会に提出した。この種の「官益」法人が設立されたのは一九五〇年代(郵政弘済会が五二年)にさかのぼるから、約半世紀も問題が放置されていたことになる。あまりにも長きにわたった「政治と行政の不作為」といえる。

公務員の互助会の性格上、こうした公益法人は母体の官庁と文字通り一体化して、事務所を本省の建物内部に構える「農林弘済会」や「全国特定郵便局長協会連合会」のような財団もある。財団法人「防衛弘済会」の場合、防衛庁本部正門前のビルに共済組合から借りて入居しているが、同財団は事業目的の柱に、防衛庁職員・家族の「相互扶助」と並んで「防衛思想の普及」を挙げた。

つまり、防衛庁だけでは十分に対応できない防衛思想の普及を、講演会や図書の寄贈、広報紙誌を通じて側面から盛り立てようという広報活動だ。同財団は、六五年一〇月に「公益事業と認められて公益法人になった」というが、こういう防衛思想の広報活動が主務官庁から「公益性あり」と認められたのかもしれない。収益事業の柱は、共済組合から受託して行う「隊員クラブ(酒保)」の運営だ。委託費はなく、隊員からカネをとって事業を行っている。民間に委託した場合、辺地の駐屯地でやってくれるか、やってくれたとしてもいいサービスが受けられるか疑問だという。

この防衛弘済会に比べると、財団法人「郵政弘済会」の収益事業の内容は、霧が立ち込めるかのように不透明だ。財団を設立するために事業目的など基本的事項を記した寄附行為をみても、利権を独占してきた郵便局舎の清掃作業やパソコン、コピー機、机、金庫、伝票類などの備品の購入などの受託収益事業に結びつくような記述は一切ない。同財団は取材に対し「寄附行為」の文書のコピーを認めなかったため一々手書きをしなければならなかったが、その中にこの受託事業(役務サービス)を連想させる文面は見当たらなかった。